呼吸器疾患は、総合的な診療・地域医療の現場で日常的に非常によく遭遇する領域ですが、一方で、体系的に振り返り学習する機会が少ない分野でもあります。
本プログラムでは、こうした背景を踏まえ、総合的な診療において必須の「呼吸器」を改めて整理し、日常診療で迷わず対応できる実践力を高めることを目的に企画しました。
事前のeラーニングで、受講者は「肺炎診療」「喘息・COPDの急性増悪」「喘息・COPDの慢性管理」「急性咳嗽・遷延性咳嗽・慢性咳嗽」「胸部X線写真の読影」の動画教材に取り組み、診療知識の整理と共通理解を進めた上で、ライブ研修に臨みました。
開催当日は、事前の予習をいただくことで、より深い議論や実践的なスキル習得に集中でき、効率的かつ効果的に学習を進めることができました。
プログラム前半では、肺炎診療を中心に、病態生理や画像診断の基本を振り返りました。抗菌薬選択の考え方についても、単なるガイドラインの暗記ではなく、臨床現場で判断に迷うポイントを具体的に解説し、現実的な意思決定につなげる内容となりました。参加者同士のグループディスカッションでは、普段の診療環境や対応方針の違いに触れることで、新たな気づきや視点を得る機会にもなり、多様な現場での実践を意識した学びが深まりました。
続いて、喘息やCOPDの急性増悪への対応については、ケーススタディをもとに「外来でどう判断し、どう初期対応するか」「自分の診療環境ではどこまでできるか」といった実践的な議論が展開されました。急性期の判断の難しさだけでなく、慢性管理へのつなげ方や、患者との日常的な関わり方も含めた実践的な学習ができた点は、本プログラムならではの学びです。
後半では、薬剤師の先生方による吸入指導の実技セッションを実施しました。参加者は、事前にご自身で準備した吸入トレーナーや身近なペットボトルを用いて、実際に吸入動作を体験。デバイスごとの違いや、患者指導のポイント、薬局と連携する際の工夫まで、現場で即活用できるノウハウを具体的に学ぶことができました。講師陣の実演や細やかな解説を通して、受講者は楽しみながら正しい手技を習得していきました。
咳嗽診療に関する事前質問も多数寄せられ、講師からは「慢性咳嗽に対する診断アプローチ」「遷延性咳嗽の治療の工夫」「咳嗽に対する薬剤選択の実際」といったテーマに対して、事例を交えた丁寧な解説があり、受講者の関心の高いテーマにしっかりと応えていただきました。
胸部X線写真の読影セッションでは、事前学習動画で確認したポイントをもとに、実際の画像を用いたクイズ形式で学びました。参加者は回答を選びながら自身の理解度を確かめ、講師による解説を通して、見落としやすい所見や鑑別のコツを楽しく深く学ぶことができました。
総合医育成プログラムでは、このように「事前学習」と「同期型の双方向学習」、「実技体験」を組み合わせ、現場で活かせる知識とスキルを効率よく身につけられる設計を大切にしています。今回の呼吸器学習も、診療現場で明日からすぐに役立つ具体的な実践知を得ることができ、多くの参加者から好評をいただきました。